広報霧島 2013年9月号

広報霧島 2013年9月号 page 3/28

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広報霧島 2013年9月号

「あたいも好きでボケたとじゃなか。一番困っちょっとはあたいじゃ。これからどげんなっていったろかい…」“霧島トメさん”が認知症になった不安を訴えるシーン。会場は涙に包まれます。主人公で認知症の“霧島トメさん”と家族の日常を描き、認知症や介護について紹介する劇団「たけちゃん一座」。“トメさん”にふんするのは座長で横川町の福祉施設「みどりの風」に勤める竹下智行さん(45)。団員約15人のほとんどが市内の福祉施設で働く職員で、台本や衣装も自分たちの手作りです。劇団ができたのは23年前。福祉施設で働く竹下さんたちは、認知症の方が偏見の目で見られていると感じ、「認知症を正しく理解してもらいたい」と劇で認知症への理解を訴える活動を始めました。最初のころは、認知症の人を支える家族のつらさを紹介していましたが、認知症の人と接する中で本当につらいのは本人なんだと気付き、記憶をなくしていく不安など認知症の人の「思い」にスポットを当てるようになりました。伝えたい思い劇は1時間程度、そのうち約8割は笑い。鹿児島弁を使い、トメさんが巻き起こすトラブルを喜劇仕立てで表現しています。しかしそこには、竹下さんの葛藤がありました。「誰もが気軽に認知症のことを受け入れてもらうためには、笑いを交えながら紹介することが必要だと考えました。でも、認知症の人の行動を笑いにすることで不快に思われたり誤解されたりしないか不安もありました」笑いの多い劇ですが、クライマックスに涙を誘う場面があります。冒頭で紹介したトメさんの思い。涙を浮かべ、トメさんの必死の訴えを聞く観客。会場の雰囲気が一気に変わります。「トメさんが不安を訴えるシーンで、今まで笑っていた観客の表情が一変し、それを見て私の中のトメさんの思いがさらに込み上げてきます。あのとき私は演じているのではなく、不安でいっぱいの霧島トメさんそのものなんです」公演が終わったあと、観客の方から「認知症の方も苦しいんだね」と声をかけられました。それを聞いて竹下さんは「思いが通じた」と一言。福祉関係のイベントや地域の勉強会など、毎年年間15公演以上行い、最近では県外からも声が掛かる人気の「たけちゃん一座」。団員は仕事の合間や休日などを使い練習に励みます。「認知症になった本人が一番不安に感じている。その思いを理解してもらいたくても、認知症の人の中にはうまく表現できない人が多い。私たちは、その代弁者になりたいんです」と話す竹下さんの表情からは、強い決意が伝わってきました。認知症を地域に理解してもらうために、たけちゃん一座はこれからも演じ続けます。※オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)認知症になっても、住み慣れた場所で生活を送る仕組み作りが目的。主な内容は状態に応じたサービスを提供するための認知症ケアパスの作成・普及、早期治療・対応をするための支援チームや医療センターの設置、地域での生活を支える介護サービスの構築、認知症サポーターなどを増やして地域での生活・家族の支援強化、医療・介護サービスを担う人材の育成のための「認知症ライフサポートモデル」の策定など。座長 竹下智行さんたけちゃん一座3 Kirishima City Public Relations, 2013.9, Japan