広報霧島 2013年10月号

広報霧島 2013年10月号 page 13/28

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広報霧島 2013年10月号

ピアノが奏でる新たな出会い※ストリートピアノ=誰でも自由に弾けるよう商店街などに設置されたピアノ。国分のストリートピアノは隼人工業高校美術部の生徒が「不思議の国のアリス」をイメージしてペイントしたもの。物語でアリスがいろいろなキャラクターと出会うように、ピアノが新しい出会いへと誘うように願って。細かな表現ができるように書き込まれた練習用の楽譜13 Kirishima City Public Relations, 2013.10, Japan国分パークプラザの市民広場にある※ストリートピアノで、いきものがかりの「ありがとう」など最近の流行曲からショパン作曲の「バラード」などクラシックの難曲まで、ジャンルを問わず自分の好きなメロディの曲を弾いているのは、牧之原養護学校高等部2年生の岡留将まさ隼と君(16)。その傍らには母・洋子さんの姿も。将隼君は生後6か月のときに心臓の手術を受け、その後、知的障害があることが分かりました。「治ることはないと知らされショックでした。少しでも良くならないかと遠くの療育所にも通いました」と洋子さん。思い悩む日々を送る中、将隼君が音に敏感であることが分かります。1歳半のころ、3歳年上の姉のために父親の進さんが買ったキーボードに興味を持つと、毎日時間さえあれば触るようになります。そして4歳のある日のこと。いつものようにキーボードのデモ演奏曲「星に願いを」が聞こえてきたと思った洋子さんが送った視線の先には、自らピアノを弾いている将隼君の姿が。耳を頼りに音を覚え、いつの間にかデモ演奏と同じように弾けるようになっていたのです。小学4年になると担任の先生からピアノの指導を受け、楽譜もすぐに読めるようになります。小学6年からはピアノ教室に通い、発表会を目標に練習するようになり、昨年は鹿児島市の街なかコンサートに出演するまでになりました。「将隼は本当に音楽が好きで、いつもピアノに触れていたいのだと思います。ストリートピアノのことも当然気になっていたようですが、自分の物でないピアノを勝手に弾いてはいけないと思ったようで、いつも眺めるだけでした」と笑います。しかしその日はいつもと違い、楽しそうにストリートピアノを弾いている人の様子をずっと眺めていました。「やっぱり弾きたいんだ」と思い、洋子さんは将隼君の手を引いて思い切って声を掛けると、弾いていた方は快く譲ってくれました。将隼君はいつも眺めるだけだったピアノを弾ける喜びを一身にピアノにぶつけます。最初に弾いていた人たちはたちまちその演奏のとりこに。演奏の後、拍手をもらった将隼君は素直にうれしそうに笑いました。それがピアノを通して新たな出会いが生まれた初めての瞬間でした。それからも弾くたびに、通りすがる人たちが立ち止まり、演奏に耳を傾け、中には「上手だね」と話し掛けてくる人もいます。ピアノを弾く将隼君の傍らで洋子さんは話します。「これまで将隼を支えてくださった皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。話すことが苦手でも音楽が人と人の心を結んでくれる。音楽とピアノが人生を豊かにしてくれることを将隼は知っています。そのことをほかの人にも知ってほしいのだと思います」音の美しさや楽しさと一緒に「人を惹ひきつける」力を持つ音楽。その魅力を一人でも多くの人に伝えたくて、将隼君はピアノを弾き続けます。岡留将隼君(16)小学5年のときに初めて障がい者対象のコンサートへ出演。その後多くの演奏会を経験。11月3日には川原小学校でのイベントへ出演。好きな作曲家はドビュッシー。国分川原在住。両親と2人の姉の5人家族。