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概要

広報霧島2014年5月号

〈随ずいそう想〉し始め、全身の筋肉が緊張でガチガチに硬くなり体の自由を奪う。本番の舞台には魔物が潜んでいるのだ。だが、もう逃げられない。客電がフェードアウト…。波が引いていくような静けさの中、会場は暗闇へ溶けていく。と突然、闇の中から大音響が響き渡りサーッと幕が開く。この瞬間のために頑張ってきたのだから楽しもう。大きく息を吸い込み、子どもたちがスポットライトの中へ弾けて行く。火照り切った手のひらをぎゅっと握り締めて…。「ミュージカルのオーディションを受けてみたい」長女が目を輝かせて言うので、昨年春の市民参加型ミュージカル「大隅浪漫~1300年の時空を超えて~」のオーディション会場へ向かった。緊張感で空気が張り詰めた会場には、顔の筋肉を和らげようとパシッパシッと頬っぺたをたたく人や、無理してぎこちないほほ笑みを浮かべる人、黙々と柔軟体操を繰り返す人など、大勢の老若男女で溢れていた。20年の歳月を経て体に染み込んだ記憶がその熱気によってあぶり出される時。娘の付き添いだったはずなのに、引き出しの奥にしまい込んだはずの役者魂が“むんず”と顔を出す。恐るべし役者魂…いつの間にか長女と共に5か月間の稽古へ参加していた。夏のころには、本番の舞台袖に陣取り体をほぐしながら出番を待つこととなった。2000個の視線が舞台上の演者たちに集中する。見られることの恐怖と快感が交差するはざまで、今ここで確かに生きているということを、全ての感覚で感じる瞬間。「人は誰もが人生という名のステージで生きている」とは、誰かが言った言葉。誰もが未来を思い描きながら、一秒一秒の時を刻むように自らのドラマを演じ、生きているのだ。20代のころには道草して過ごした時もあったが、今こうして生まれ育ったまちで、家族や仲間たちと同じ時を刻んでいる。昨年の夏、長女の勇気が教えてくれた。長い間心の奥深くしまい込んでいた宝箱のふたが、再び開いた。「きりしま創造舞台の夏は熱い!今年の夏もヒートアップ!!」国民文化祭のプレイベントProfileいざ、ミュージカルのまちへ◎末重 堅司「ブーー 開演のベルが鳴る」ほんの今まで楽屋で騒いでいた子どもたちが急に無口になり、表情が次第にこわばっていく。握りしめた手のひらには、ジワリと汗がにじむ。気持ちが高揚していくのと同時に膝のあたりがガクガクとして「大隅浪漫~1300年の時空を超えて~2014」を、8月9、10日の両日に上演する。続いて来年の国民文化祭は、新作で幕が開く。 開演まで約一年半。どんな作品になるのか、もう今から楽しみでしょうがない。一緒に歌って踊って演じる仲間たちも大募集することになるだろう。みんなで、このまちを「ミュージカルのまち」にできたら…夢がどんどん膨らんでいく。ブーーおっ!? 間も無く開演ですよ、さぁ一緒に踊りましょ。昨年開催された「大隅浪漫~1300年の時空を超えて~」。中央は和気清麻呂を演じる末重さんすえしげ けんし(51)霧島市溝辺町生まれ。福岡の建設専門学校卒業後上京。舞台芸術学院ミュージカル部を経て、オンシアター自由劇場、演劇集団演劇研究所などで芝居漬けの青春時代を過ごす。22年前に帰郷。5年前に父親から会社を引き継ぎ家族と共に暮らす。27 Kirishima City Public Relations, 2014.5, Japan