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概要

広報霧島2014年6月号

大規模な断層と同方向である北東-南西方向と、それを直交する北西-南東方向の2方向から成り立っています。これは、三十数万年前に起きた断層とその後の火山活動による構造運動がこの地域に2方向から圧力(ストレス)を与えたことで、縦横に断層(亀裂)ができ、その亀裂に沿って水が流れ河川となったと推測されます。これは塩浸水力発電所の集水地の下流に、西へ半島状に突出したように迂回する河川の付け根に、北東-南西方向の洞穴があります。この洞穴は人為的な鑿のみ跡あとが残されており、江戸期に用↑天降川と不思議な地形水路として使用されていましたが、おそらくこれは断層によって亀裂が生じ、そこに河川の水が流れ込んで洞穴が出現し、これを利用したものと思われます。写真①にあるように洞穴の延長上には、断層によってできた亀裂が走っています。また、久留味川にも、写真②のように河川に沿った北東-南西方向の断層によるずれを見ることができます。三、天降川の成り立ちこのように天降川は、地殻変動や火山活動によって、現在の場所を流れるようになり、三万年の歳月をかけて流水による浸食によって、現在の地形を形成しました。また、当地は火砕流などが幾重にも堆積していることから、その層の間を地下水が流れ横川町の「大おお出で水みず」を代表するように、多くの湧水があります。この豊富な湧水によって、極めて水質の良い環境が保たれており、清流で限られた場所にしか生息しない「カワゴケソウ」も自生しています。天降川中流域は、開発の手がほとんど入っておらず、豊かな自然をそのままに残し、さらには地質・火山・植物など、多岐にわたる貴重な資料がたくさん点在しています。(文責=鈴)ことができ、学術的にも教育における野外標本としても大変貴重なものとなっていることから、平成25年3月27日、「天降川流域の火砕流堆積物」として、国の天然記念物に指定されました。二、不思議な地形天降川は、三十数万年前の大規模な断層によって窪地ができ、その断層面(北東-南西の方向)に沿って河川が形成され、現在の場所を流れています。天降川の地形を詳しく見ていくと、不思議な現象を見ることができます。特に、新川渓谷遊歩道に架かるラムネ橋から上流へ天降川・久留味川それぞれ約2㌔の範囲は、周辺の河川に比べて著しく蛇行しています。その方向は、(約十万年前)や錦江湾を起源とする姶良カルデラ(約三万年前)の火砕流の地層が連続して露出しています。九州の5大カルデラ噴火1注のうち、3つの噴火の火砕流堆積物が見られる地質学的にも大変貴重な地域です。ちなみに「火砕流」とは、高温の溶岩のかけらや火山灰、火山ガスなどが混ざり合って流れ出し、熱風を伴って周辺を焼き尽くす現象で、姶良カルデラの場合は火砕流が南九州を覆い尽くし、標高260㍍までシラスが堆積しています。前回は天降川と温泉の関係について紹介しましたが、今回は天降川の不思議な地形とその成り立ちについて紹介します。一、国指定天然記念物天降川の河川の底は、えびの盆地を起源とする加久藤カルデラ(約三十四万年前)の火砕流堆積物をベースに、指宿地域を起源とする阿多カルデラ噴火時に火砕流堆積物が熱と重さによって再石化した「溶結凝ぎょう灰かい岩がん」は天降川の河底に露出しており、水の作用によってさまざまな甌おう穴けつをつくり出しています。その特徴は、甌穴形成の初期の段階から甌穴が発達して一つにつながり溝を形成するなど、甌穴の発達過程を見る注1 阿蘇・加久藤・姶良・阿多・鬼界カルデラ新川渓谷遊歩道国指定天然記念物範囲断層の方向①洞窟とその延長上の亀裂②断層(近景)塩浸水力発電所天降川久留味川広報きりしま 18histor y & national park