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概要

広報霧島 2015年2月号

音楽療法とは、「音楽の持つ効果を理解し、意識的に音楽を活用して参加者に良い変化をもたらそうとすること」です。これまで児童療育施設、養護学校や高齢者施設などで、多くの方に接してきました。効果は人により幅があり、質的にも異なりますが、音楽を聴いたり歌ったりすることで、ほとんどの方に良い変化が表れました。体を強くし、心を癒やす「歌う」という行為は、日常生活ではほかにあまり例のない、長い息を操ることであり、普段は使わない筋肉を使います。姿勢を保ち腹筋を使うことがそれにあたり、心肺機能を向上させ、口の周りの筋肉も発達します。それが唾液の分泌を促し、口の中の衛生状態を向上させます。その結果、免疫力が高まる効果も期待できます。認知症予防にも効果があります。「大声で歌うこと」そのものが非日常的な行為で、平板になりがちな生活の刺激となります。歌う時は歌詞を追ったり思い出そうとしたりするので、複数の作業を同時に行うことが脳を活性化させます。懐かしい歌を歌うことがきっかけで、当時の楽しかった出来事などを思い出し、やる気と自信を取り戻したケースを数多く見てきました。発達障害のある子どもは、音や歌を聴くことが言葉の獲得につながり、意思の疎通が可能になることもあります。何年も話せなかった子どもが1年半でコミュニケーションをとれるようになったこともありました。楽しんで歌うことはストレスを発散させ、精神を安定させます。子守唄の効果も同じで、自らの歌うリズムに心が安らぎ、リラックスした精神状態が幼児に伝わるのだと思います。生活の質を高める歌は一人ではなく誰かと一緒に歌うことで、人間関係や生活の質(※QOL)の向上にも大きく貢献します。音楽の持つメロディのうねりは心の動きにも同様なものを生み出しやすいので、歌うことで大勢の方が同じような気持ちを共有できます。そのため、互いの心の距離が縮まり、信頼や安心感が生まれて、コミュニケーションも増えます。さらには、人間関係が広がり、生活における選択肢や活動の可能性も広がります。そのことが本当の「生活の質の向上」といえるのではないでしょうか。歌は“心”と“体”に効きます歌うと心が弾み、元気がでてきませんか。歌にはすごい力が隠れています。鹿児島国際大学准教授で音楽療法士の中村ますみさんにその秘密を聞きました。中村ますみさん(52)奄美市出身。鹿児島大学教育学部音楽科卒業。昭和61年、鹿児島県教員。平成10年、県立牧之原養護学校へ赴任。平成17年、鹿児島国際大学短期大学部音楽科助教授。平成25年、同大福祉社会学部児童学科准教授。日本音楽療法学会認定音楽療法士。音楽療法研究会「日々輝(ひびき)」代表。鹿児島市在住。※QOL /クオリティ・オブ・ライフとは、人がどれだけ人間らしく自分らしい生活を送り、人生に幸福を見いだしているか、ということを尺度としてとらえる考え方。心理的効果?心の緊張を解きほぐし、不安やストレスを軽減する?自己の尊厳を回復させる?痛みや悩みを緩和させる身体的効果?運動能力を維持、向上させる?感覚や反応を向上させる?心肺機能を高める社会的効果?集団内の交流を促す?社会や他人と協調する行動を増やす?コミュニケーション能力を向上させる?楽しさや遊び、ユーモアの場をつくる?余暇活動を充実させる認知的効果?脳を活性化させる?集中力を高める?回想を促し、記憶を呼び起こす音楽療法が目指す効果の例広報きりしま 4