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概要

広報霧島2020年12月号

茶の喫茶店「年輪堂」。運営するのは中津川地区自治公民館まちおこし部の新里大輔さん(42)です。新里さんは平成28年に大阪から牧園町中津川に移住。「母が姶良市の出身で、子どもの頃によく祖父母の元を訪れていました。自然に囲まれてのんびりと過ごす優雅な姿に憧れると同時に、なぜ生活するために古里を離れ、都会に出なければならないのかと疑問を持つように。田舎の里山でも暮らしていけるというのをいつか自分で実践したいと考えていました」と移住の理由を話します。「霧島山を望む牧園町は、多様な自然や農産物、水、温泉などその恩恵を受ける豊かな里山です。先人たちが育んできたこの里山を次の世代につなげたい。でも実際に暮らしてみていくつかの課題も見えてきました」と続けます。解決の手掛かりはずっとこの地に「里山と聞くと、子どもが放課後や休日に大自然の中を駆け回っている姿を想像する人が多いでしょう。実際のところ過疎化が進む地域では、大人の目が行き届かず、自然の中では安全に遊べない。公園もほとんどない。日常的に子どもだけで安心して遊んだり、学んだりできる場所が必要」。そう考えた新里さんが目を付けたのが大茶樹公園でした。「ここは中津川小学校と隣の持松小学校の中間にあり、山間部から市街地への中継地点で地域の方たちが行き交う場所。歴史を刻むこの大茶樹の下に人々が集い、憩いの場になることが理想だと考えました。子どもたちが学校区を超えて集まり思い思いに過ごす。それに伴って親や高齢者も気軽に立ち寄れるようになれば、人のつながりを強めることができるのではないでしょうか。実現するために、子どもたちが楽しめる仕掛けや建物、人材、それらを運営するための稼ぎが必要なのです」足掛かりとして新里さんが考えたのが年輪堂を造ることでした。地区自治公民館長の力添え構想が決まっても越えなければならない壁がありました。地域住民の理解を得ることです。早速、地区自治公民館長に相談した新里さん。その思いに賛同し応える形で、館長の協力を得ることができました。新里さんは「市や地域との調整は私だけではできなかったと思います。館長の協力がなければ、年輪堂はまだ完成していなかったかもしれません」と感謝します。年輪堂がオープンして半年。訪れた地域の人は「田舎にこんなおしゃれな所が」と驚き、「気軽に立ち寄って話ができる所ができて良かった」と喜びます。中には地区内に住んでいながら、10年以上会っていなかった友人とたまたま再会したといううれしい出来事もありました。地域の人たちには無料のチケットを配り人が集まるような工夫も。「人のつながりや新たな魅力の発見につながるので、気軽に来て、会話を楽しんでもらいたい」と呼び掛けます。最近では休日に、SNSを見た人など県内外からもお客さんが訪れるようになりました。新里さんと同じように里山で暮らすことに関心がある人から、移住の相談なども増えています。「まずは霧島茶をはじめとした里山の魅力を集めたサービスを提供し、利益を地域に再投資することで持続的な発展を目指します」。■地域で頑張る人たちを紹介した今回の特集。地元、古里、移住先などの条件や手段はそれぞれ違っても、次の世代に「残したい」「伝えたい」という同じ思いがありました。市内では他にも地域を盛り上げようと頑張っている人たちがいます。皆さんもぜひ、その場所やイベントなどを訪れてみてください。思いが人をつなぎ、広がることで、地域の活性化にもつながっていきます。思いを結ぶ赤い糸。皆さんで紡いで、たすきを未来につなぎましょう。これまでは大茶樹公園を訪れる人はほとんどおらず、その存在自体を知らない人も多かったと思います。果たして実現できるのか心配でしたが、地域の活性化を願う新里さんの熱意に打たれ協力しました。地区自治公民館の運営委員会で、若い人を集めて構想を説明すると「いい取り組みだ」「出来ることは協力する」と反応があり、地域を思う気持ちは皆同じだと感じました。総会で提案すると「田舎に人が来っどかい」「自分たちに加勢できることがあっどかい」と不安の声もありましたが「難むっかしことは分からんどん、地域が良くなるなら任すっで」と皆さんが賛同。霧島山を一望できる素晴らしい場所に拠点ができました。ここで行事をするなど年輪堂の存在を広め、子どもから高齢者まで世代を越えた交流につなげていきたいです。中津川地区自治公民館長邉へん田た 政弘さん(66)地域とつながるI N T E R V I E Wつながる、広がる人の思い地域に根差し、広く深い絆で結ばれた赤い糸7 Kirishima City Public Relations, Japan 2020.12, Vol.332