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概要

広報霧島2021年3月号

国分敷根出身。2㌔のウオーキングと離れて暮らす子どもとのテレビ電話が日課。国分敷根在住。前原 睦男さん(90)400字に記す人生の記録THE SCENE Vol.159霧島に生きる今年2月に創立140年を迎えた南日本新聞。同新聞には、読者から投稿された400字程度の文章を掲載する「ひろば」の欄があります。そこに四半世紀近く投稿を続けるのが、国分敷根に住む前原睦男さん(90)です。前原さんが投稿を始めたのは67歳の時。20歳から小学校教諭として働いていた前原さんは、原因不明の体調不良で入退院を繰り返し、57歳で早期退職をします。その後、甲状腺の病気を患っていたことが判明。治療で回復に向かい始めていた矢先、自宅で転倒して硬膜下血腫を発症、数日間意識不明の状態が続きました。手術で無事に回復しますが、頭を使い老化を防止するために始めたのが「ひろば」への投稿でした。一度も休むことなく23年間、毎月投稿を続けている前原さん。毎月2回の投稿が目標ですが「気分が乗らないときは1回のときもある。投稿した文章が全て掲載されるわけではないので一喜一憂せず、の文章は、150作品に迫ります。掲載100回達成の際には自費で掲載作品を集めた冊子を作成。1月には卒寿記念として2冊目を作り、兄弟や同級生、知人、教え子などに配りました。その中には、「ひろば」への投稿を通して知り合った人も。「昨年、妻が亡くなった時に投稿した文章を読んで『私も同じ境遇です』と手紙をくれた方と文通が始まりました。掲載がしばらくないと『お元気ですか』という手紙が届くこともある。病気がきっかけで始めた『ひろば』への投稿が私に多くのことを授けてくれた。まさに災いを転じて福となす。元気な限りは書き続けたい」と笑う前原さんは、これからも意欲的に筆を取ります。続けることに意味があると思って投稿していたら、あっという間に23年が経ちました」とほほ笑みます。新聞やニュースなどを見て関心を持った社会の出来事や、季節のことなどその時に感じたことをチラシの裏にメモし、考えがまとまると400字詰めの原稿用紙に書き出します。「最初は800字、多いときは1200字にもなる文章を『ひろば』の投稿要件である400字程度にする作業が大変。何度も推すい敲こうを重ねて一つの作品に仕上げます。でも、そのお陰で昔は書くのが面倒だった手紙も、今では楽に書くことができます」と話します。「自分が幼い時に体験した戦争のことや、今月で10年を迎える東日本大震災のことなど、これまで掲載された文章を見返すと、当時の記憶や文章を書いた時の思いが一瞬でよみがえってくる。『ひろば』に掲載された作品が私の人生の記録、生きてきた証です」これまで同新聞に掲載された前原さん15 Kirishima City Public Relations, Japan 2021.3, Vol.337